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あれこれ アーカイブ

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出港

ドラの音が聞こえてくると、出港が間近にせまっていることがわかります。

客室を出て、右舷のプロムナードに向かいます。

通路に出ると、スチュワードがドラを鳴らしながら歩いています。

昔から続いている出港の合図です。

「本船は間もなく出港いたしますので、りの方は下船くださいますよう・・・」

とアナウンスも繰り返されます。

もう右舷のプロムナードは人がいっぱいになっています。

岸壁に並んだ赤い制服のブラスバンドが、軽快なマーチを演奏して見送ります。

だれかが手渡された紙テープを1本、送る人に向けて投げると、堰を切ったように、赤や青や白や紫のテープが舷側からこぼれ落ちていきます。

しかし、プロムナードは船の4階、高さにして水面から12メートルはあるから、テープをわたしたい人に届けるのは、なかなか難しいです。

海風が流れ落ちるテープを空に舞わせます。

全長150メートルを越えるテープの滝。

岸壁で遊んでいた子どもが、テープを身体に巻きつけて楽しそうにしています。

曲が「蛍の光」に変わったら、いよいよ港を離れるとき。

汽笛が野太い声をあげ、船は自分の力で横に動き、岸壁との間に青黒い海の溝ができます。

その溝はどんどん大きくなって、船と岸をつなぐテープを切っていきます。

岸壁から数十メートルの距離になると、船は船首を湾口に向けます。

出港。

巨体は加速すると驚くほどの速さで、岸壁の人影を小さくし、もう顔もわからないほどの距離となります。

ひたすら手を振りつづけます。

東京タワーがビルの間から、乗客を送っています。

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動くリゾート

前日に船は港に入っていました。

白い船体には、かわるがわる黒い小柄なバージ(はしけ)が取りついて、燃料油や水を補給します。

一方、陸側の船腹からは、生鮮野菜や肉や魚などが運びこまれます。

客船では、乗客にサービスするメニューが豊富です。

フランス料理、和食から、エスニック料理まで、すべてをまかなう食料は、たいへんな量になります。

船は、食料貯蔵庫と冷凍貯蔵庫を、いつも満腹にしてから出港します。

冷蔵庫と冷凍庫だけでも1000立方メートルと、ちょっとした倉庫並みの大きさ。

それでも長旅になると、生鮮食品は寄港地で補給することもあります。

客船でのクルーズ(周遊)旅行の楽しさはいろいろあって、人によっても、楽しみ方は違う。

しかし、だれもがあげるのは食事の楽しみなのです。

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1日7回の食事サービス

現在、世界のクルージングのメッカといえばカリブ海。

"有名船"たちが集合している地域です。

このカリブ海あたりで船旅を楽しむ外国人にとって、「キャビンは寝るだけの部屋」です。

ニューヨークなどのアメリカ東部、カナダから、せっかくのカリブ海の夏を満喫しようとやってきた人たちは、昼間はサン・デッキのプールサイドでデッキ・チェアにもたれ、夜はどこかのラウンジやバーでグラスを重ねます。

そして、1日中続くいろいろな催物に参加します。

その間に食事が出るのだから、部屋に戻る時間がないというのもうなずけます。

それだけに、食事の質が、その船の評価に直接結びつくのです。

「ふじ丸」でも、モーニング・コーヒーから始まって、朝食、モーニング・ブレイク、ランチ、アフタヌーン・ティー、ディナー、レイト・ナイト・スナックまで1日7回の食事サービスが用意されています。

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水の管理は一等航海士の責任

食料と同様に、水の補給と管理も客船ならではの苦労です。

調理から洗濯、シャワー、風呂、トイレにまで真水が使われます。

多いときは1日200トンもの水が消費されるのです。

この乗客にとって生命線でもある水の管理は、一等航海士をトップとする甲板部の責任なのです。

ところで、「ふじ丸」は客船として"船の旅"自体を楽しむために造られています。

現在の客船のほとんどは、クルーズ船なのです。

クルーズ船は"動くホテル"であるばかりか、"動くリゾート"でもあるのです。

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船のスチュワーデス

船は甲板部、機関長をトップとする機関部、それに無線部、医務部、そして直接、乗客と接する船客部に分かれます。

船客部のトップは飛行機と同じでチーフ・パーサーとよばれます。

チーフ・パーサーの下にパーサーがおり、スチュワード、スチュワーデスがいます。

これも飛行機と同じですね。

もちろん船のほうが歴史があることから推察できるとおり、航空業界が、客船のシステムをそっくりそのまま取り入れているのです。

飛行機には絶対に乗っていない職種、コックはどのセクションに属するのか・・・。

それはやはり船客部になります。

どの船にも名物料理というのがあります。

街のレストランで「シェフのおすすめ料理」というのと同じで、チーフ・コックの腕前は船の評価の一部とさえなっています。

「あのクルーズのときの食事が忘れられなくて」と、また、その船に乗ってくる人が多いのです。

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乗客6人に1人の乗員

クルーたちの居住区は1階(1デッキ)、B1階(2デッキ)、B2階(3デッキ)にあります。

B2階といっても地下室ではありません。

B2階のところが船の吃水線にあたります。

この日の船の乗組員は、船長以下105名。

ここから甲板部、機関部、無線部、医務部、それに調理場の中の人を除く65名が、直接、乗客をアテンドするわけです。

日本航空の場合、ジャンボ・ジェット機のキャビン・クルーは15名。

これで400名以上の乗客をアテンドします。

「ふじ丸」の船客定員は600名。

船の乗客に対するサービスの質の高さがわかりますよね。

人件費の安い乗組員を使う外国の客船では、船客数の半分くらいの乗組員が乗っている船もあります。

船は24時間体制の「動くホテル」でもあります。

ベッドメークからイベントの案内、売店まであるのです。

そこでスチュワードやスチュワーデスは、1人で何役もこなさなければならなくなります。

長い船旅の間に顔見知りになった若いスチュワーデスにたずねてみましょう。

彼女たちの「職住一致」の働きぶりを。

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オフィサーとクルーはどう違う

夜が明けました。

出港の日です。

気の早い乗客は、出港の数時間も前から乗船しはじめます。

乗船すると乗客たちは上の階へ、上の階へと案内されて自室に入ります。

キャビンは全室が海側配置(海に面している)だから、たとえ船が動いていなくても、展望台のようなベイ・フロントの魔望だ楽しめます。

そしてこの最高級のスイート・キャビンのさらに上の階にも、部屋があります。

船長室や機関長室、一等航海士などの部屋です。

「ふじ丸」はメイン・エントランスがアッパー・デッキ(2階)にあり、3階がパブリックスペース、4階から上の3階分がキャビンになっています。

エンジン音や振動から、できるだけ客室を離す方法がとられているのです。

ところで、船の乗組貝は、別格である船長(キャプテン)を除いて、次の2つに大きく分けられます。

航海士、機関士、通信士、事務長、事務員、船医などをオフィサーとよび、それ以外をクルーというのです。

日本流にいうと職員と部員という表現になりますが、このよび方も船と人の長い歴史を表しています。

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なぜ船にブリッジ(橋)があるのか

さて、船長室のそのまた前方、つまり船のいちばん見晴らしのいい場所が、ブリッジ(橋)です。

ナビゲーション・ブリッジ(航海用船橋)とも表現しますが、普通はブリッジ(=操舵室)とよんでいます。

操舵室なのになぜ橋なのでしょうか。

最新型の船ではわかりにくいのですが、1940年頃までに建造された船を前方から見ると、操舵室の両脇に大きく張り出した部分が目につきます。

これをウイングといいます。

このウイングから接岸や離岸のときに船長が身を乗り出し、船が岸壁にぶつからないように、前後を見やすいように造られているのです。

このウイングは両手を広げた橋のように見えることから、ブリッジとよばれ、日本語に訳されるときに「橋」では収まりが悪いので、船橋となりました。

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水先案内人の仕事

出港の1時間ほど前から、ブリッジは慌しさをまします。

すでに海図には航路が引かれています。

陸上との無線連絡の回数は、時間を追うごとに増えていきます。

双眼鏡とトランシーバーを手にした制服を着ていない年配の人が、船長と頻繁に打ち合わせを繰り返します。

パイロット(水先案内人)とよばれるベテランで、その港での船の出入港を取り扱っています。

パイロットは船長経験者であり、その港のことなら、ナメるように知りつくしています。

この時間なら、どのあたりで潮流が変わり、どこに浅瀬ができるか・・・などといった刻々と変化する港の状況がすべて彼の頭脳にはインプットされているのです。

前部マストに「出港」の旗がひるがえりました。

一等航海士と二等航海士の姿は、このときブリッジにはありません。

一等航海士は船首に、海士は船尾についています。

彼らはトランシーバーでブリッジに、船の前後の状況を伝え、岸壁に結んだロープ(もやい綱)を巻き上げたりする作業を指示します。

操舵手は、操舵輪に軽く手をふれて立っています。

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